嬬恋村を西から東に流れる吾妻川。
村役場のある大前から三原、JR吾妻線の鹿沢・万座口駅あたりに掛けて右岸には急峻な崖が出来ている。
高さはおよそ80mともいわれている。
行ったことも見たこともないがトルコの世界遺産「カッパドキア」に似たような景色があるそうだ。
この崖は浅間山噴火の出来事の一部を物語っているのだ。
地質時代(有史以前)には吾妻川は軽井沢方面に南下していたが、浅間山の噴火による山の形成によってさえぎられ、現在の嬬恋村の中心付近は水溜り、古嬬恋湖と呼ばれる大きな湖であったようだ。
この崖の一番下にはこの湖底の堆積物がある、といわれている。
そして、およそ2万4千年前ほど前、浅間山は大きく崩壊して黒斑山を残して影も形もなくなった。
そのとき発生した土石なだれ、塚原土石なだれが吾妻川に流れ込んだ。
これが下から2番目の崖の構成物。
再び活動を開始した浅間山、1万5800年前最大の噴火が起こった。
その際流れ出したのが平原火砕流、この崖の大部分がこの火砕流の痕跡だ。
そして、天明3年(1783年)の土石なだれはこの平原火砕流の上をすべるように吾妻川に流れ込んだ。
一番西側の大前付近の崖。
上は平原火砕流の運んだ火山灰とか火山砕、下はごつごつの石の部分は塚原土石なだれの跡か?
もう少し村役場方面に足を進めると崖の一番下の部分には丸い石が堆積した地層がわかる。
これがおそらく吾妻側の底、古嬬恋湖の底に当たるところかもわからない。
どんどん下っていくとこれはまさに「カッパドキア」。
西窪のJR吾妻線のトンネル出口付近には平原火砕流跡に層がいくつか見られる。
この火砕流は津波のように何度かに分けて襲ってきた可能性がある。
国道144号線から鬼押しハイウエイに上っていく村道横には今にも頭の上に崩れてきそうな火山灰の崖。
そして、鬼押しハイウエイの横にはこんな滝が出来ていた。
壮大な地球の奥底からの脈動をほんの少し感じた崖探検だった。