光源氏17歳の夏のことだった。
空蝉は控えめで慎み深く、小柄で容貌も美貌とはいえない地味な女性であった。
が、その立ち居振る舞いは際立っていた。
求愛に対する彼女のつれないあしらいに却って思いが募るばかりの源氏。
忍んで行った先の空蝉は一枚の着物を残し逃げ去った。
これを源氏がセミの抜け殻にたとえて謡った和歌。
「空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな」
源氏は女の抜け殻のような衣にことよせて空蝉へ歌を送り、空蝉も源氏の愛を受けられない己の境遇のつたなさを密かに嘆いた。
日本人の奥ゆかしさをほうふつさせる源氏物語の空蝉、これはハルゼミの抜け殻(空蝉)だ。
畑に植えておいた下仁田ネギの茎に残された空蝉。
飛び去ったハルゼミのぬくもりが伝わってくるようです。