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あるちゅはいま日記

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刺身のけん

昔はデパートへ出かけるのが休日のレジャー。
夏は冷房が効いてるし、買うものがなくても結構楽しい。
エレベーターを降りるとたいてい大根のけんを作る「ケン突き器」の実演販売がいた。
一家に1台、いや数台はあった必需品。
刺身のけん_b0126549_21154367.jpg
ネクタイにエプロン姿のおっさんが口角泡を飛ばす口上とともに見る間に山盛りの大根のけんが出来上がる。
これはうまくできる、と騙されて買って帰り数回使うと大根のけんはギザギザになってしまう。
また、別の実演販売で買ってしまうので「ケン突き器」は台所に何台か揃うことになる。
ともかく、刺身のけんはそれぞれの家庭で作っていたのだ。
いま、スーパーで刺身の盛り合わせパックを買うと大量の大根のけんがついてくる。
それも三寸以上の長いけん、丸めるとからまって解けないぐらい。
家で作ったけんはそのまま食べるが、パックに残った生魚の匂いがするけんはどうも食べられない。
このけんは盛り付けを美しく見せるための他に、毒消し(口の中を洗う)という意味がある。
刺身を口に運ぶ前に大根のけんを醤油を付けずに食べると、口中に残っている他の料理の味を消し、刺身の味を一層引き立たすという役割があるのだ。
本来は残すことなく食べなければならないけんなのだ。
大江戸時代の町民の一番のご馳走は江戸前の刺身だったようだ。
浮世絵に描かれた月見の料理屋では大皿に刺身がもられているのが見て取れる。
刺身のけん_b0126549_21361046.jpg
当時の庶民の食生活は質素で、魚介類はハレの日のものだった。
生鮮魚介類は無塩(ぶえん)とよばれて特別のご馳走だ。
ただ、冷蔵庫もなかった時代、いたんだ生魚で中毒することもままあった。
毒消しの野菜は長年に渡り培われてきた日本生食文化の知恵なのだ。
今日は8.31、野菜の日だそうだ。
by hanaha09 | 2012-08-31 21:59 | 田舎暮らし | Comments(0)
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