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あるちゅはいま日記

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琴橋の椀貸し

雪がしんしんと降る日は昔話でも。

JR吾妻線長野原草津口駅を少し西にいったところを左に下っていくと、琴橋がある。
その下の流れは吾妻川である。琴橋の上から下をながめると、西の岸はやや川幅が広くなって、平らな岩があるあたりは水の色も青黒く、底知れぬ深みが感じられるところがある。そこを昔から村人は竜宮の入り口と、信じてきた。
琴橋の椀貸し_b0126549_12332859.jpg

はるか昔のこと、村人の一人が、自分のうちの祝儀が近づくにつれて、お客をもてなす膳と椀がなくて困っていた。そこで村人は思いついた。
「そうだ、竜宮へ手紙を書こう。」
さっそく、白い紙に、「息子の祝儀があります。膳と椀でお客をもてなしたいのです。」と、書いて琴橋の上から川に流した。
あくる日、再び、村人は琴橋の上に行った。そして、下の流れを見たらなんと不思議。平らな岩の上にお願いしておいた膳と椀がきちんとそろっているではないか。村人は大喜びで家に持ち帰り、おかげで立派な祝儀をすることができた。この話は、またたく間に村中に広がり、村で人寄せがあるたびに、必要な道具と数を紙に書いて流すと、翌日には例の平らな岩の上にそろえてあったという。そして、用の済んだ膳と椀はきれいに洗って、「ありがとうございました。」と書いた紙をあげて岩の上にそろえておくと、いつの間にかなくなっていた。こうしたことが長い間続いてきた。
ところが、あるとき、欲の深い村人が一人いて、「椀の一つぐらい返さなくてもわかるまい。」と、失敬して自分の家にしまっておいたのだ。そうしたらどうだ。その家から火が出て、たちまち焼けてしまった。
それからというもの、村人がいくら頼んでみても、竜宮からは何の音さたもなくなってしまったという。

この昔話は椀を貸す場所、貸主が多岐にわたって変わるものの同種の話が日本全国に分布するようだ。
特に中部地方、群馬県には広く伝わっているそうだ。
これらに共通するのは、膳や椀の持ち主は霊威的な存在で、貸借の場所は現世・俗世界と、異郷や他界との接点であるということである。
でも、この山の中の川渕に龍宮の入り口とはなんで?と思ってしまいます。
椀貸し伝説が全国区で伝えられているのは木地屋(ろくろを使って木製椀を作る特殊技能集団)があちこちで良質の木材を求めて渡り歩いた、その影響も。
村人たちとの接触のため(お椀を商売とした?)に誠しとやかに語った口伝え伝説であったともいわれています。

雪の中で村人たちが清貧に助け合って生きて行かなくてはならない戒めであったに違いありません。
長野原の昔話からでした。
長々となりましたがまだまだ雪のやみそうに無い一日です。
by hanaha09 | 2011-02-12 13:40 | 田舎暮らし | Comments(0)
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